投資の常識は間違いだらけ!?失敗する前に今一度考えてみよう
しかし、なかには本当に常識といえるのか疑わしいものも存在する。また、投資家の投資スタイルや考え方の違いなどによって、常識と非常識が変わる内容もあるのだ。
そこで今回は、投資初心者が陥りやすい投資の常識を8つ紹介する。
①「長期投資はリスクが低い」
投資した資金に対する損失の割合だけで考えれば、この投資の常識は間違いである。なぜなら、投資期間が長くなるほど価格変動幅は大きくなりやすいので、期間が長いほどリスクが高くなるからである。
この「常識」が一般の人の間で信じられているのは、まず、投資の心構えとリスクを混同しているためだ。「ゆったりした気持ちでトレードするなら長期投資」「失ってもいい額の資金を使って宝くじ感覚で銘柄を所有する」など、単に投資に対する自分の気持ちをリスクに当てはめるのだ。
仮に、株の1銘柄に10万円投資して1年で7万円になったとしよう。気持ち的にはあまり苦しくないかもしれないが、資金は70%に減っており1トレードとしてはリスクの取りすぎである。
「長期投資では一時的なブレに耐えられるので、相場予測が当たりやすい」という人もいる。こうした面は確かにある。
だが、安定株の代表といわれた東京電力はどうなっただろうか。ノーベル経済学賞受賞者らによって運用され、世界一安全と言われて巨額の資産を集めたヘッジファンド「LTCM」も破綻した。
自分の資金を長く市場にさらすほどリスクが増すのは確かなのである。ちなみにLTCMのLTは「ロング・ターム」、長期=低リスクという常識が出資者を集めるのに効果があったことは間違いない。
②「投資上級者は分散投資をしている」
投資経験が長く、安定的にリターンを得ている上級者は分散投資をしているという常識もある。「分散投資は投資の王道」などと語られることも多い。だが、分散投資するということは、ローリスクになる分ローリターンになってしまうデメリットがある。
一緒に昼食を食べられる権利(チャリティーランチ)が5億円で落札されるほど著名な投資家ウォーレン・バフェットは、「分散投資は素人がやるものだ」という意見だ。投資で資金を増やせる能力があるなら、自信がある銘柄のポジションを増やせばいいだけだという。銘柄を増やすほど分析に費やす時間が多くなり、資金管理が難しくなるとも語っている。
③「あらかじめ利益目標を決めるべき」
ある期間での利益目標や運用利回りを決めておくべきだというのは、広く知られた投資の常識だ。不動産投資では表面利回りや実質利回りを調査したうえで、物件を選ばなければならない。
しかし、賃貸物件の家賃収入などのように収益に限界がある場合は別だが、株式投資やFXのように額が決まっていない投資に関しては目標を決める必要は特にない。利益は伸びるほどよいからである。トレードで勝つためには損小利大の行動が不可欠だ。目標を決めることでリスクを過大に恐れたり、わずかな利益で満足したりしないことが大事である。
④「投資対象は国内がよい」
「日本人は日本の株式を買っておいた方が何かと安全」「円資産のほうが経済の活性化にも貢献できる」などの意見がある。個人投資家の多くが無意識に持ちやすい常識といえるだろう。こうした傾向は「ホームカントリーバイアス」と呼ばれ、投資リターンを下げるだけでなく、リスクも高めてしまうことが知られている。
たとえば、1992~2017年で世界経済は3倍に成長したのに日本はほぼ横ばいだ。単純に考えると、グローバルな分散投資をしていればパフォーマンスがよかった可能性が高い。個人金融資産をみると日本はホームバイアスが強い傾向があり、このことが世界経済成長の恩恵を受けられなかった原因にもなったのだ。円に偏った資産形成になっているなら、ホームバイアスにとらわれていないかチェックしてみてはどうだろうか。
⑤「初心者トレーダーはトレンドフォローだけをしろ」
投資初心者向けのテクニカル分析の解説では、「レンジは難しいからトレンドがあるときにトレードしましょう」「トレンドフォローが簡単です」などといわれる。これは大体間違いのない内容だ。
しかし、これらの常識を「いつもトレンドフォローしなければならない」と間違って受けとる人が多い。多くの投資本やWebサイトでは、基本的なエントリーポイントを紹介する際に「トレンド相場の場合」という前提を省略するからだ。
マーケットの7割以上はレンジ相場なので、いつもトレンドフォローをしてしまえば、成績はとても悪くなってしまう。レンジ相場でトレンドフォローをしようとすると、エントリーの条件が整うころには天底に近い位置になっていることが多いのだ。
トレンドフォローは常に安定した成績を出せる万能手法ではない。特定の相場環境でのみ機能する一手法に過ぎないと割り切る必要がある。
⑥「テクニカル指標を組み合わせるほど精度が上がる」
特定のシグナル配信サービス業者や投資スクールなどでしばしば常識として語られるのが、テクニカル指標を組み合わせることによって成績が向上するというものだ。かなりの数の投資本やWebサイトなどでも同じことが主張されている。もちろん、これで成功しているトレーダーはゼロではないのだろう。
だが、ほとんどの場合、失敗に終わってしまうことが多い。これは、いわゆる「聖杯探し」と呼ばれる行為であり、分析過多になって判断を迷わせるか間違ったシグナルを乱発するだけなのだ。
テクニカル指標は時間と価格という1次情報を加工したものであり、それを組み合わせるとさらに複雑になる。そのため、最適な指標の組み合わせを探したり、ちょうどよいタイミングでエントリーシグナルが出る設定値にしたりするのは困難だ。
この作業に熱心に取り組むほど、カーブフィッティング(過去の相場に過剰に最適化された設定にすること)になり、現実の相場では機能しなくなるのだ。
⑦「人の行く裏に道あり花の山」
大衆のやり方の逆をしたほうが大きな成功を得られるというのが、「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言である。投資の分野に限らずビジネスの常識として使われることもあるほどだ。ちなみにウォール街にも「人が売るときに買い、人が買うときに売れ」という言葉がある。
この格言には真理が含まれている。個人投資家の平均を調べてみると、上昇相場で売り、下落相場で買うという行動を取る傾向があり、常に損失を出し続けているからだ。しかし、だからといって資産を増やした少数の投資家・トレーダーが突飛な行動を取ったというわけではない。
「上昇相場で買う・下落相場で売る」というのは、投資のセオリーどおりだ。トレードでは「5歳の子どもにもわかるような戦略が理想的」とよくいわれる。裏ばかり狙って「曲がり屋」(相場予測をいつも外す人)にならないようしたいところだ。長い間優秀な成績を上げている投資家・トレーダーには正統派が多い。
⑧「投資はギャンブル・お金儲けは罪」
「投資は単なるギャンブル」という意見がある。また「何も生産しない投資は罪である」という意見も聞かれる。こうしたことから、個人投資家のなかには、後ろめたい気持ちを感じている人もいるかもしれない。
だが、こうした常識は世界では通じないことが多い。たとえばアメリカでは、資本主義で生きる必須の知識として、子どものうちから資産運用や株式投資について学ぶ。さすがに実際のお金で投資はしないが、10歳ごろからはデモトレードもする。もし、投資はギャンブル・罪といった常識が気になる場合は、世界の常識に目を向けてはどうだろうか。