FTX破綻から考えるSPAC企業の破綻連鎖
FTXの破綻は新たなエンロン事件への予兆?
前回の次の記事に記したように
https://real-int.jp/articles/1852/
SPAC上場企業など新興上場企業の破産はいつか起きると思っています。
そして、エンロン事件のような株式市場暴落へのきかっけとなる企業破綻もありうるということです。
11月11日、仮想通貨交換最大手のFTXがチャプター11申請 (米国連邦破産法第11条を申請、いわゆる破産申立)を行いました。
FTXはSPAC上場企業ではありませんが、その財務状況の不透明さと出資しているファンドメンバーを見ても、SPAC上場企業と類似しているといっても過言ではないでしょう。
きっかけは、業界紙コインデスクが関係会社の資産約$150 億ドルの約4割は自社が発行しているビットコインのような仮想通貨FTTだという記事を発表したことです。
7日に競合のバイナンスのCEOが保有するFTTを売却、FTTは暴落します。
FTXの資産価値が急落したということになります。
9日にバイナンスが救済合併検討を発表したのですが、通常2〜3ヶ月はかかるデューデリジェンス(買収相手の資産価値やリスクを調査する作業)開始後わずか1日、翌日10日には方針を撤回する異常事態となっていました。
その結果同日、投資家であったシリコンヴァレーの老舗VCのセコイア・キャピタルは持ち分の評価額をゼロにすると発表していました。
その翌日にはチャプター11と、問題発覚後わずか10日あまりでの破産劇でした。
このFTXの破産申請は、市場の隠された闇を提起しています。
光り輝いているように見える人間は、実は内面は闇で覆われていたということです。
1. 米国ではCEOが高く評価され、信頼されていた
CEOのバンクマンフリードマン氏は危機におちいった暗号資産企業への救済を行うなどホワイトナイトのような存在であり、19世紀に危機に陥った新興企業救済にあたった同名大手投資銀行の創始者JPモルガンの再来と言われていました。
民主党への献金額は第2位です。
「次のウォーレン・バフェット」という異名まで持っていたので、FTXについての信頼感は米国では非常に高かったわけです。
2. 出資企業も有名ファンドが揃っていた
FTXに投資していた代表的なファンドは上述のセコイア・キャピタル、タイガー・グローバルというタイガーファンドとして知られる大手ヘッジファンド、著名ヘッジファンドのサード・ポイント、シンガポール政府投資公社、ソフトバンクなどです。
いずれも投資業界の人間なら知らない方はいないという著名機関ばかりです。
3. スポーツなどを通じ、一般にもFTXブランドが浸透していた
プロ・バスケットボールリーグNBA所属のマイアミ・ヒートの本拠地はFTXアリーナと命名されています。
F1でもメルセデスのスポンサーとなり、そのロゴが車体やルイス・ハミルトンらドライバーのユニホームに輝いていました。
企業アンバサダーとしてはNFLでは史上最高のクォータバックとされるトム・ブレイディ、4度のNBA制覇を達成している歴代最高のシューターのウォリアーズのステフィン・カリー、メジャーリーグでは大谷選手が起用されています。
日本でいうと楽天やソフトバンクほどではなくとも、大手FX企業ぐらいにはブランドは認知されていたということです。
4. 資産の内情は公表されていた内容とは異なり、過大評価されていた
そして、コインデスクがリークしたように、資産の4割は、流動性が低くリスクの高い仮想通貨でした。
実態は仮想通貨交換所ではなく、関係会社を通じて他の商品に投資をしていたようです。
FTXには誰もが知らなかった大きなリスクが隠されていたということでしょう。
これはITバブル崩壊のきっかけとなった2001年の粉飾決算のエンロン事件や2007〜08年の世界金融危機を引き起こした破綻リスクが高い低所得者向けの住宅ローンを債券化して意味不明の商品としたサブプライム・ローンを想起させます。
その財務状況の不透明さに対し、サマーズ元米国財務長官もエンロン型の金融詐欺だと指摘しています。
つづく・・・
【全3部構成記事】
https://real-int.jp/articles/1866/
https://real-int.jp/articles/1867/
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