防衛費・GDP比2%実現への疑問
現在、岸田政権の下で2022年末に向けて「国家安全保障戦略」・「防衛計画の大綱」・
「中期防衛力整備計画」といった防衛に関わる基本方針の見直しが進められている。
岸田首相がこれらの見直しを表明した後、今年2月のロシアによるウクライナ侵略が発生し、7月の参院選でも争点の一つになったこともあって、特に「防衛費のGDP比2%」が、これらの基本方針にどう反映されていくのかが注目される。
2月24日のウクライナ侵攻は欧州諸国を震撼させ、一部の国で防衛費の見直しの動きが出ている。特にドイツ・ショルツ首相は侵攻3日後に、近年GDP比1.1~1.4%で推移していた防衛費を同2%超に引き上げる歴史的な方針転換を打ち出した。
2014年に承認されたNATOの「防衛投資制約」では「2%」について2024年までの達成が求められているが、2021年時点で達成しているのは30ヵ国中、8ヵ国のみである。
しかし、ウクライナ戦争の長期化は必至であり、必然的に達成に向けた動きは加速すると想定される。
日本では自民党が4月の「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」において、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標も念頭に、我が国としても、5年以内に防衛力を抜本的強化するために必要な予算水準の達成を目指すこととする」とした上で、7月の参院選の公約においても同様の方針を示した。
浜田新防衛相も就任会見のなかでNATOの目標を引き合いに「対GDP比は指標として一定の意味がある」「防衛費の内容や規模等については、新たな国家安全保障戦略等の策定や今後の予算編成過程において検討したい」と述べている。
2%設定は政治的意思
自民党は2%設定のベースをNATOの考え方に置いた。
NATOはホームページ上ではNATO加盟国において、米国と米国以外のGDPはほぼ半々(51対49)にも拘わらず、後者の防衛費は半分よりはるかに少ないという、このアンバランスを指摘している。
そして2%のガイドラインについて、アンバランスの改善を通じて「同盟国の軍事的即応性を確保すること」を企図するとともに、「NATOの共通防衛努力に貢献する国の政治的意思を示すもの」と説明している。
「比率」は防衛費増からの軍備の増強を通じて「即応性」に効果をもたらすと考えられるが、先述のドイツの方針転換のインパクト、あるいは日本における論争の通り、「政治的意思」に対してより直接的な効果をもたらしていると考えられる。
一般的に同盟とは、ある同盟国が攻撃された場合に他の同盟国にも防衛義務が発生する、言い換えれば他国のための犠牲を覚悟する極めて強固な関係である。
他国にも守ってもらう以上、同盟国として応分に貢献するのは当然であり、その「政治的意思」を示すものとして、NATOでは経済力に対する応分の貢献=「GDP比2%」をガイドラインとしている。
日本も「北半球軍事同盟」(NATOとアジア地域の米国同盟国の合体化)の主要な加盟国になるゆえ、財源問題を棚上げしても、この「GDP比2%」という「政治的意思」を示したと言える。
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(この記事は 2022年8月28日に書かれたものです)
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