円安トレンドに変化の予兆
景気後退懸念が突如・浮上へ
米金利が米国の景気後退懸念の高まりから6月21日を頂点として下落傾向になっている。例えば、7月1日の米国10年国債利回りは2.88%台(6月21日は3.28%手前)である。
しかし、ドル円相場は6月21日の136円70銭台が134円80銭とわずか2円程度の円上昇にとどまった。日米金利差がドル円相場の主因ならば127~128円程度まで円が急上昇してもおかしくはない。
もっとも、7月1日のドル実効指数(DXY)は105ポイント台と歴史的最高レベルゆえ、現段階ではこんな程度なのだろうが、そろそろ、ドルがピークアウトし、ドル円も流れが変わっていく時系列に近づいたのかもしれない。
それこそ、「日銀が賭けた待望の神風」が吹く兆しが現れたとでも言おうか。
FOMC(6月14・15日)が終了した直後の6月17日、NY連銀の分析チーム(エコノミスト)が以下の予想リポートを公表した。
われわれの維持している経済モデルでは米経済のソフトランディングの確率は、わずか10%である。四半期のGDP伸び率がマイナス1%を下回ることが向こう10四半期(2年半)で、少なくとも1回起きるハードランディングの可能性は80%だ。
一方、FRB内部で鋭い分析と研究姿勢から高い信頼を得ているシニアエコノミストは21日、景気後退期の特徴である失業率の大幅な上昇が50%以上の確率で、1年以内に起きると分析するリポートを発表。
高いインフレと低い失業率、金融環境などを勘案すると足元で起きている需要超過は、景気の減速によって解消されるという。
19日、ブルンバーグのコメンテーターであるサマーズ元米財務長官は、2023年の景気後退入りを予想。「数カ月前には一般的でなかった見解が、統計分析によってコンセンサスになっていく」との自信を示した。
さらに米国野村證券は23年内の景気後退入りをメインシナリオとし、英フィナンシャルタイムズとシカゴ大学が世界の経済学者50人弱に実施した6月調査では4割が23年前半までの景気後退を予測した。
こうした情報の重なりが6月22日以降の米国債利回りの低下につながったのは、FRB議長が次回7月会合での利上げ幅の決定を決め打ちすることこそなかったものの、インフレ対処へのコミットメントは「無条件」としたうえで、インフレ鈍化の確かな証拠を確認するまでは、景気減速には目をつぶってでもインフレ対策を優先する姿勢を示したからだ。
また、議長は22日の議会証言で、積極的な金融引き締めの結果、米経済がリセッションに陥る可能性は低いとしつつも、そのリスクはあると発言した。
折りから欧州圏でも広く景況感の悪化が確認され、足下では「炭鉱のカナリア」と称される銅の価格が下げ足を速め、6月30日のLME(シカゴ)非鉄金属相場は四半期ベースで2008年のリーマンショック以来の大幅な下げに向かい、LMEX指数(LME工業用金属6種で構成)の中でも3月末比で、錫マイナス39%、アルミマイナス30%、銅マイナス20%となった。
事態はこうした周辺の外掘りデータにとどまらなくなり始めた。米経済(GDPの70%以上を占める)個人消費が減速し、リセッション入りが現実味を帯びてきた。6月30日に発表された5月の米個人消費支出は、実質で前月比マイナス0.4%と5カ月ぶりに減少。
今年は新型コロナウィルスの収束で人々の外出が増え、モノからサービスに消費の柱が移るとみられていた。確かにサービスは+0.3%と堅調だったが、財(モノ)がマイナス1.6%減った。モノの落ち込みをサービスで補えていない。
7月1日には6月の米ISM(サプライマネジメント協会)製造業景況感指数が発表され、53.0と前月の56.1から低下した。
好不況の境目である50割れが視野に入ってきた。
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(この記事は 2022年7月5日に書かれたものです)
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