日銀YCC政策は崖淵に立たされた
日銀は6月16・17日の政策決定会合で金融緩和の継続を決定した。「金融を引き締めると経済成長も大きなマイナスになる恐れがある」と断言をしている。
現在の対ドルでの円安の急進がドル金利の大幅上昇に起因していることは周知の事実であり、仮に米国経済に急速な鈍化が目立ち始め、ドル金利が下がり始める(特に長期金利)と、長短金利の逆イールド化が深まり、リセッション懸念の拡大とともにドルも下がり始める。
そうなると、いわゆる「円キャリートレード」の投機的動きも止まり、ドル円相場も125円方向へと戻っていくシナリオも浮上する。
日銀は、このシナリオが近いと分析し、あくまでも忍耐強く、長期金利0.25%を守り抜き、YCC(イールドカーブ・コントロール)政策を維持しながら“神風”を待とうという戦略を決めた、ということではあるまいか。
また、財務省とのタッグマッチ体制を続けるしかない日銀としても、これしか手はないということであろう。
市場との対話なんぞ、あるはずもない
現在のように世界中でインフレが問題視されるような状況では、インフレ懸念の高まりによって自然に長期金利が上昇する。そして、その長期金利上昇は設備投資などの需要を抑制することにより、物価上昇をいくらか和らげる効果がある。
中央銀行も長期金利の動きをモニターして、インフレ懸念の高まりがどの程度かを測ることができ、それを政策に反映させることができる。
しかし、YCC政策は長期金利の適正基準を日銀が決め、長期金利上昇を、人為的に低めに抑制しようという政策ゆえ、そうした市場の自動調節機能が働かない。
インフレ懸念の高まりを受けて、直近の10年債利回りは日銀が上限と判断している0.25%を超える日が散見されるも、結局は力によるねじ伏せで押し戻している。
そこには、すでに市場との対話という中央銀行の柔軟性は存在していない
円安加速の主役になりつつある
インフレ懸念の高まりから米国が先行して金融引き締めに動いているというのは確かだが、日本でも程度の差はあれ、インフレ懸念は高まっている。
名目長期金利を実質長期金利(10年物価連動債利回り)と、予想インフレ率は欧米の動きに沿って上昇していることがわかる。半面、実質長期金利は欧米とは逆に低下している。
日本ではYCC政策により名目長期金利が固定されているため、インフレ懸念が高まると実質長期金利が低下することになる。そして実質長期金利低下は金融緩和政策を「維持」しているとの日銀の考えとは幾分ずれ、市場からは、金利面で金融緩和が「強化」されていると解釈される。
また、YCC政策の下では量的な面でも金融緩和が「強化」される。10年債利回りが0.25%を超えて上昇しそうな局面では、日銀が国債を無制限に購入し、抑え込もうとする。
つまり、本来ならインフレ懸念で長期金利が上昇するような局面で、日銀は逆に金融市場に無制限な資金供給を行なう。円安が急速に進行してきたのは、米国が金融引き締めに動いているのに対して、日本は実質金利面、量的な面から、「金融緩和を強化」しているからだと言える。
そして、この円安は輸入物価を押し上げるため、
(1)円安による輸入物価インフレ懸念が長期金利上昇圧力を高める
↓
(2)日銀はそれを抑えるため金融緩和を一段と強化
↓
(3)円安に拍車がかかる
↓
(4)輸入物価インフレ進行思惑で長期金利上昇圧力高まる
という循環が続く恐れがある。
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(この記事は 2022年6月28日に書かれたものです)
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