投資による利益には税金がかかる
例外はあるが一般的に投資で得た利益には、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%を合計した20.315%の税金がかかると考えておこう。毎年受渡日ベースで1月1日~12月31日までを年間損益として計算して納税する。
ここでは、投資と税金というテーマでさまざまなケースを取り上げ、節税方法についても解説する。
株式投資による税金
株式の取引から生じる利益には譲渡損益(売却損益)と配当金がある。譲渡所得には申告分離課税が適用され、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%の税金が発生する。
たとえば、東証1部やマザーズ、ジャスダックなどの各銘柄に対する取引である。現物取引や信用取引などの種類に関係なく、得た利益に対して一律で20.315%が課税されるのだ。
ただし、会社勤めの方の場合、株式投資で得た利益を確定申告している方はあまりいないだろう。これは取引口座が「特定口座」の「源泉徴収口座」になっているからだ。この口座の種類にしておけば、年間の譲渡損益、配当、利子を合計して源泉徴収される。もちろん損が出た取引については通算され、年間利益分の税金を自動的に納付してもらえるのだ。
一方、特定口座であっても「簡易申告口座」にしておくと、年間の損益を証券会社が計算してくれるものの源泉徴収はされない。つまり、譲渡損益と配当、利子の確定申告が必要だ。また、一般口座も自ら年間の損益を計算し、同じく確定申告をする必要がある。
NISA口座は非課税
NISAでは少額投資非課税制度が採用されている。年間120万円までなら譲渡損益と配当金に税金がかからない。上場株式だけでなく投資信託、ETF、REITなども対象になっているため、投資初心者は経験を積みやすいのではないだろうか。
NISAの口座を開く条件は20歳以上だが、20歳未満の方が開けるジュニアNISAという非課税口座もある。自分の子どもに早いうちから投資の経験を積ませることもできるのだ。ただし、どちらも非課税期間は5年間に限る。
また、つみたてNISAなら年間の非課税枠は40万円までとなるが、20年間積み立てられる。長期で積み立てしたい場合は、こちらを活用しよう。
FX・先物・暗号通貨など源泉徴収制度がない投資は確定申告が必要
FX・先物などの投資においては源泉徴収制度がない。したがって、利益が出た場合には確定申告が必要だ。これらの投資においても申告分離課税が適用される。確定申告では「先物取引に係る雑所得等」として他の所得と区別され、合計20.315%の税金がかかるのだ。
FXなどの投資においては利益が出なかった年に確定申告の必要はないが、損失を申告しておいたほうがよい。「損失の繰越控除」という制度があり最大3年間損失が繰り越され、利益と通算(相殺)できるからだ。
仮に、2020年にマイナス100万円、2021年にプラス50万円、2022年にプラス20万円、2023年にプラス100万円だったとしよう。この例では、2020年は(それ以前の取引がなかったとして)当然、無税である。2021年は2020年の損失が繰り越されているので「-100+50=-50万円」で無税、2022年もまだ損失が残っているので「-50+20=-30万円」で無税、2023年は「-30+100=70万円」となり、ここで初めて利益70万円に対して20.315%の税金を納めることになる。
この繰越損失は毎年継続して申告しないと無効になってしまうことに注意が必要だ。余計な税金を納めないためにも、FXなどにおいては利益が出せなかった年も確定申告をしておこう。
暗号通貨(仮想通貨)は総合課税
以前は仮想通貨と呼ばれていた 暗号通貨[a1] は株式やFXのように申告分離課税ではなく、雑所得として総合課税されることに注意が必要だ。したがって、他の所得と合計して累進課税で所得税率が決まる。税率は以下のとおり。
・195万円以下:5%
・195万円超~330万円以下:10%
・330万円超~695万円以下:20%
・695万円超~900万円以下:23%
・900万円超~1800万円以下:33%
・1800万円超~4000万円以下:40%
・4000万円超:45%
加えて、住民税が10%と復興特別所得税0.315%が一律でかかる。
雑所得には特別控除がないため、取引所への手数料や電気代の一部など経費を差し引いた利益全てが課税対象となる。給与などの所得と合計すると予想以上の納税額となる場合もあるので、あらかじめ納税額の目安を把握しておこう。また、赤字が出た場合でも、ほかの所得とは損益通算できない。
暗号通貨ではFXや先物のように損失の繰越控除が出来ない点にも注意が必要だ。暗号通貨は雑所得として総合課税の対象となっているため、この制度が使えないのだ。
経営者や個人事業主の方などは事業所得として申告すればいいと考える人もいるかもしれない。しかし、現実には事業として暗号通貨の投資が認められるのは難しいといえる。一概には言えないが、従業員がいて事務所を構えるなどの規模でないと事業としては認められないケースが多いようだ。事業所得に分類しようと考えている場合は、納税前に税務署に確認するなど準備が必要である。
個人投資家ができる節税対策
株式投資において簡易申告口座(特定口座の源泉徴収なし)や一般口座を選び、自分で確定申告をする方法については先に紹介した。なぜ、わざわざ自分で申告する方法を選ぶのだろうと疑問に思った方もいるかもしれない。この方法を選ぶメリットがあるのは、給与以外の所得が20万円以下の方の場合だ。この場合、住民税は納める必要があるものの、所得税及び復興特別所得税はかからないので節税が可能だ。
また、あまり知られていないことだが、所得が695万円以下の場合は国内株式の配当金を総合課税で申告したほうが節税になる。なぜなら、配当金を総合課税で申告した場合には所得に応じて配当控除が適用されるからだ。695万円以下の実質税率は7.2~17.41%になるので配当金と通算される上場株式などの損失がない場合は、総合課税を検討してみてはどうだろうか。
損益通算できる投資を選ぶ方法もあり
「卵は1つのカゴに盛るな」という投資格言があるように、投資対象を分散してリスクヘッジすることは有効だ。しかし、投資の税金という観点からすると、損益を通算できる対象を選んだほうがよい面がある。
たとえば、国内株式でさまざまな分野の銘柄を選べば損益通算ができるので問題はない。しかし、株式と先物、商品オプションなどは損益を通算できないことに注意が必要だ。このような組み合わせによってリスクヘッジできるのは確かだが、税金対策という意味ではデメリットが生じる場合もあるのだ。
総合課税の暗号通貨で損益通算が可能なのは、ビットコインとリップルなど種類が異なる暗号通貨への投資、あるいは現物取引と仮想通貨FXなどとの組み合わせである。株式やFX、先物などの申告分離課税の投資対象と損益通算できないことに注意が必要だ。
外国株式や海外FXなどの投資に税金はかかるのか
投資家が日本国内に住んでいれば、日本で税金を納めなければならない。「外国での取引だから日本に税を納める必要はない」と勘違いしたり、「どうやって海外に納税すればよいのか」などと悩んだりする方もいるので、この機会に覚えておこう。ちなみに日本人であっても海外に現住所があれば、その国に納税しなければならない。
もうひとつ注意が必要なのは、海外で税金を自動徴収されてしまう場合だ。たとえば、米国株式の配当金には「外国源泉徴収税」という制度があって源泉徴収されてしまう。仮に米国株式における配当金が100万円あったとしよう。すると外国源泉徴収税は10%なので、100万円×0.9=90万円が実質的な利益だ。日本ではこの90万円に対して、所得税・住民税・復興特別所得税の合計20.315%が課税される。つまり、手元に残るのは約71万7,165円ということになる。
これでは二重取りではないかと不満に思う人もいるだろうが、そうではない。確定申告すれば、アメリカに納税した10万円分が還付されるからだ。米国株式に投資している方はぜひ知っておこう。