バフェット指数とは
とはいえ、著名な投資家が考案した指標や指数を見るということは、投資家としてのレベルを上げるという意味では有用である。その考え方や考案したロジックを理解して自分自身の投資に応用することは、とても大切な向学のプロセスだろう。
ここでは、バフェット指数に焦点を当てて解説していく。
バフェット指数は
バフェット指数とは、投資の神様ともいわれるウォーレン・バフェット氏が株価の割高や割安を判断する際に用いる指標とされている。
この指数を出す計算式は次のとおりだ。
■ 「当該国の株式時価総額÷当該国の名目GDP(国内総生産)×100」
この値が100を上回ると株価が割高、下回ると割安といわれている。これは、ある国の株価は長期的な視点で見ると、その国の経済力に見合った水準に近づいていくという考えに基づいて使われる指標である。
バフェット指数の見方
バフェット指数を用いることで株価の割安・割高がわかるとすると、バフェット指数をどのように参考にするかがわかる。株に投資する際にはその株が本来持っている価値よりも株価が安いときに買い、高いときに売るのが当然だろう。
そこで、バフェット指数に関しては「バリューゾーン」という考え方が存在する。バフェット指数が70~50の値をとるゾーンのことを指してバリューゾーンという。つまり、ある国の株式時価総額がGDPの50~70%ほどしか満たしていないときにこそ、株に投資する価値があるという考えだ。
本当に機能しているのか、例として過去のアメリカのバフェット指数をみてみよう。
1978年ではバフェット指数は50-70程度で推移していた。その後、米国株式市場は上昇傾向を継続しているため、投資するタイミングを図る上でバフェット指数はいい参考指標になったといえるだろう。
一方で、1997年9月ごろにバフェット指数は100を超えてきている。そして2000年にアメリカでは景気後退入りとなったが、その時のバフェット指数は140を超える水準であった。
次に景気後退入りしたのは2007年だが、この時のバフェット指数は100を少し超える水準となっている。
このように、バフェット指数はGDPを基準として割高か割安かを長期的な視野で判断する。一つの材料として利用できる指標ではあるが、景気後退入りまでの期間の差が大きいという点ではこの指標単体で投資を行うには適していないのかもしれない。
また、2013年からバフェット指数は現在まで100以上で推移しており、7年程度が経過している。こうして考えると、100を超えたからというのが何かのサインになっているかといえばなっていないのが現状だ。そのため、この指数だけで投資を行うことに疑問が生じる投資家も多いだろう。
また、次項でバフェット指数についての注意点を詳細に解説する。
バフェット指数の注意点
バフェット指数を見る時の注意点についてご紹介していく。
先ほどに重複する部分もあるが、「バフェット指数のみで投資するのは難しい」ということである。バフェット指数が100を超えたからといって、すぐに下落したり景気後退入りしたりするわけではない。数年程度、時間がかかる場合もあり、それは経済情勢次第だろう。
上記のケースで説明すると、1997年にバフェット指数が100を超えてから、3年程度経過した後、バフェット指数が140を超えてくる過程で景気後退入りをした。この期間は3年あり、もしも100を超えて株が下落する方向へ賭けていた場合、その間上昇している株に対して耐え続けなければならない。また、株のショートの場合、コストがかかることを考えると、なかなか3年間保有し続けるという投資家もいないのではないだろうか。
次に、リーマンショック前に景気後退入りした2007年のケースの場合、バフェット指数が100をちょっと超えた段階で株が下落し始めた。そして、リーマンショックが起こり、世界的な株の急落につながることとなる。
この間、数ヶ月というギャップしかなく、ここで株をショートしていた場合は大きな利益が上がったことだろう。
このように、いつ指標の見方通りに動きが生じるのかわからないことから、他の指標を併用することが大事だ。
また、「バフェット指数は割安時にいつ株を保有するか?」という購入時のタイミングを図る時に利用するユーザーが多いといわれている。株が下落するタイミングでこの指数を利用する場合は、他の材料と合わせて判断するのが賢明だろう。
さらに、バフェット指数についてはもう一点大きな注意点がある。
計算式は「当該国の株式時価総額÷当該国の名目GDP(国内総生産)×100」ということは冒頭説明したが、この計算式を考える上で大事なことがある。
例えば、日本という国を考えた時に、当然ながら企業決算で株価は決まることが多い。その企業が海外で生産して売り上げた部分に関しても、株価に織り込まれていると考えるのが自然だろう。一方で、GDPの場合は国内総生産であるため、日系の企業が海外で生産を行った分に関してはここの数字に含まれていない。
そのため、このバフェット指数を他国と比較した場合に海外生産比率が高い国の場合、比較すると誤った見方をしてしまう可能性があるということである。
そもそも国の構造が異なる中でバフェット指数を数字で比較するのは適切ではないという意見も多く聞かれる。当然、その国のヒストリカルの数字から買い時や売り時を判断するのが有益なのかもしれない。
しかし、他国がバフェット指数100で別の国が200になっているとした場合、200の国の株が100の国と比較して下落しやすいともいえない。この点が、バフェット指数の大事なポイントといえるだろう。
また、その国のヒストリカルの数値から判断するのは有益だが、国の産業構造自体が変わってくる過程等はきちんと投資判断の一つとして入れておくべきである。
具体的には、元々外国の製造比率の高い企業で輸出関連企業が多い国は、国内で生産し国内で販売している国と比較しても分母の数字が小さくなってしまうということだ。
このように、様々なサイトで解説されている点を抑えつつ、自分なりに計算式を見て理解し、本当にこれで割安割高を見極めることができるのかという視点を持つことが大切である。
バフェット指数のまとめ
バフェット指数は長期的な投資家の中ではチェックしている機関投資家も多い指数だが、あくまで参考程度で利用する投資家が多いのが現状である。ウォーレン・バフェット自身も考案したのが大昔の指数であり、当時のアメリカの経済を占う上では有用だったのかもしれない。しかし、現在すでに機能していないと考えている投資家もいるのが実状だ。
そのため、この指数がなぜ機能していたのかを考え、自分自身でアレンジして、どのように利用するかを考えて投資を行うことがいいだろう。
まずは、各国におけるバフェット指数をチェックして、各国の株価指数とバフェット指数を照らし合わせ、どの程度バフェット指数が機能しているのかみてみよう。そして、機能していない場合は、何が問題でその国ではあまり参考とならないのか考えて投資に役立てていただきたい。