制裁の鉄槌でも戦争は終結しない
制裁に効果はあるのか
世界は間もなく「戦時経済」という極めて閉塞的で統制的な社会に突入していく。
オミクロンだのSDGsだの、脱酸素化社会だのといったマクロのテーマは、棚上げされるしかない。
外為市場にしてもマクロ経済分析や目先の各国ファンダメンタルズ分析は、予想不能になるために暗中模索の「日めくり相場」状況が深まっていくしかあるまい。
それほど、今回のロシアによるウクライナ侵略戦争はインパクトが大きい。グローバリズムに大きな傷口が開いてしまったのだから当たり前である。
もちろん、この事態が早期に収拾すれば助かるのだが、極めて厳しい報復措置を世界中から受けるロシアがどこまで耐えられるかは定かでない。
専門家の間では「制裁がいくら厳しくなってもプーチン大統領(以下プーチン)は少なくてもウクライナからの軍の撤退はしないし、プーチンの求心力弱体とはならない」との見方が多い。
CFR(外交問題評議会)リチャード・ハース会長は、「過去の制裁の歴史において、標的とした国に対して政策や譲れない一線を変化させた実績はほとんどない」という。
これまで世界で実施された制裁による成果はまちまちで、ロシアのような専制国家についてはとりわけ、言動を劇的に変化させるには至っていないと指摘されている。
イランに対して2015年の核合意を迫り、最近でも指導者に、交渉のテーブルに戻るよう促したのは、経済制裁が要因の一つと考えられている。
だが、中東での攻撃的な武力行使といった米国が問題視するイランの行動を変更、あるいは食い止めることはできなかった。
北朝鮮についても、米国や国連が経済制裁を発動しても核開発を断念していないどころか中国・ロシア・イランなどの協力で、ますます核戦力向上に向けた開発が進んでいる。
欧米諸国は1980年代初頭、テロほう助を理由に、リビアに経済制裁を科した。
制裁はリビアが兵器開発について開示し、放棄するまでの20年間にわたり続いたが、元最高指導者のカダフィ大佐は内戦で殺害されるまでさらに10年近く権力の座にとどまった。
イラクのサダム・フセイン元大統領も米国の侵攻によって政権崩壊するまで、10年以上にわたって国連制裁に抵抗してきた。
1900年代には元セルビアの指導者ミロシェビッチ氏が最終的に武力で封じられた。制裁を発動しても軍事侵略を抑止できなかったためだ。
また、米国はキューバとの通商を60年にわたり禁じているが、政権が崩壊することはなかった。
標的とする政権がさらに権力を固めたケースすらある。
ベネズエラのマドゥロ大統領は欧米による大規模な制裁措置による影響を、切り抜けているのみならず、反対勢力を抑えこんでいる。
政権交代や軍事侵攻の阻止などを目的に行われた制裁措置で、軍事力の行使、またはその脅威が伴わない場合、成功したのはわずか約5%だった(シカゴ大学教授が第二次世界大戦以降に実施された制裁措置を分析した結果)。
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(この記事は 2022年3月8日に書かれたものです)