FRBを信用していいのか
★★★上級者向け記事
想定をはるかに超えたインフレ率
1月25、26日に開催されたFOMCでは3月の資産購入終了、3月からの利上げ開始、6月以降のバランスシート縮小開始などの方針が明らかになったほか、バランスシート縮小方法に関して市場で積極的な売却が警戒されていたが、満期を迎えた証券の再投資を削減する穏やかな方法を取ることが別途公表された。
一方、利上げペースについて、パウエルFRB議長は現時点で決まっていないと発言した。
ただし、2015年の利上げ局面と比較して、インフレが2%を大幅に上回っているほか、経済や労働市場が堅調であると指摘し、当時よりも積極的な利上げとなる可能性の高いことを示唆した。
米国がインフレに襲われている。FRBが金融政策において重視している物価指標は、個人消費支出(PCE)デフレーターである。それが前年比+5.7%まで上昇している。
物価は食料・エネルギー価格の短期変動に振らされる傾向があるため、それらを除いた「コア」もよく注目されるが、そちらで見ても前年比+4.7%である。
FRBが目標とする2%を大きく上回り、約40年ぶりの高インフレになっている。このような事態は、1年前には全く想定されていなかった。1年前、FRBは2021年末のインフレ率を+1.8%と予測していた。それが実際には前述の通り6%近くになった。
筆者も、ここまでインフレ率が高騰するとは夢にも思わなかったが、先進国の中央銀行が1年後の物価見通しをこれほど大きく外すのも珍しいことだ。物価情勢の激変を受けて、FRBは大急ぎで金融政策の舵を切っている。
1年前は、少なくとも2023年末まで政策金利をゼロ近辺に据え置く見通しだったが、実際にはこの3月にも利上げが開始されるというのだから天と地の差に等しい。その後の利上げペースも、しばらくは急ピッチかもしれない。
年央あたりのバランスシート宿所も市場が早々に織り込んできた。それにしても、一体、どうして「天と地の差」につながってきたのだろうか。
インフレ要因オンパレード
短期間にここまでインフレが高まった背景は複合的である。通常思い浮かぶすべてのインフレ要因がそろったためと言ってよい。
①財に対する需要の盛り上がり
第一に、財に対する需要の盛り上がりである。米国の個人消費は、コロナ第1波に伴う落ち込みから急回復し、昨年4~6月以降、コロナ前の水準どころか、「成長トレンドの延長線上」まで完全に戻っている。
サービス消費はコロナ前の水準にすら戻っていないのだから、財の消費がコロナ前の成長トレンドをはるかに上回っているということである。驚くべき強さだ。
米国のインフレについては、供給面に原因が集中しているかのように語られることが多いが、これだけ猛烈に需要が増えれば、供給が正常だったとしてもインフレになっていたに違いない。
②供給面の要因
第二に、そのうえで供給面の要因も確かにある。これは米国に限らずグローバルな現象だが、生産現場や輸送のオペレーションはコロナ禍の影響で制約されている。半導体の不足もなかなか解消されない。
とくに米国の場合、財の消費や調達は輸入への依存度が高いうえに、国土が広大で輸送経路が長いことも供給問題が起きやすい背景になっているとみられる。
③労働需給の急速な引き締まり
第三に、労働需給の急速な引き締まりである。昨年12月の失業率は3.9%まで低下し、FRBが完全雇用の目安としている4.0%をあっさり下回った。特筆すべきは低下のスピードである。
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(この記事は 2022年1月30日に書かれたものです)
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