今後の原油価格動向を読む
★★★上級者向け記事
21年の価格推移総括
今年の国際的インフレ率動向や米ドルの行くえ、強いては米バイデン政権に決定的な影響を与えかねない11月の中間選挙結果を含め、今後の国際石油情勢は極めて重要である。
21年12月末のWTI先物原油価格は1バレル75.21ドルで終了。前日に付けた77.44ドルが11月17日以来の高値(直近安値=12月2日の62.43ドル)となった。
わずか1ヵ月弱で24%もの上昇は10月25日から12月2日までの下げ幅(37%)を含め、乱高下状況で年越ししたことの証左である。
このベースにあるのが、「脱炭素」の動き・新型コロナ禍・OPECプラス会合の結果であることも、周知の通りである。
しかし、基調的に2021年までの世界の石油需給バランスに大きな影響を及ぼし、原油価格の上昇トレンドを形成してきた最重要な要因は、OPECプラス体制による協調減産である。
コロナ禍による石油重要の大幅減少とそれによる大規模供給過剰の発生、その下での原油価格暴落に対応するため、OPECプラスは20年5月から、基準生産量に対して日量970万バレル削減という史上最大規模の協調減産を開始し、市場の状況をモニターしながら徐々に減産幅を縮小しつつも、現在に至るまで協調減産体制を維持し、実行し続けている。
原油価格の大幅な低下に対応するため、OPEC産油国が協力して減産を強化するという事例はこれまでも何度か見られてきたが、今回は非OPECのロシアも含め、実効的な大規模協調減産が継続されてきた。
その効果は極めて大きく、世界の石油在庫は2020年央から急速に低下を始め、現在は過去5年間平均の水準を大きく下回る状況になっている。この在庫の低下こそが、国際石油市場における供給過剰が、リバランスに向かい、徐々に需給タイトな方向に向かってきたことを如実に示すものであり、その下で2021年11月まで緩やかな原油価格上昇局面の持続を支える要因であった。
今年の国際石油情勢展望
こうして国際原油市場の需給が、コロナ禍による供給過剰から徐々に均衡に向かい最近はタイト化の方向に向かう中で原油価格が上昇を続けてきたが11月以降、国際石油情勢は再び大きな変化のうねりを経験することになった。
第一には、原油価格が80ドルを超えたところで、消費国の原油高騰に対する懸念が非常に高まってきたことがある。
原油価格が上昇することでコロナ禍からの景気回復の足を引っ張る要因になることが懸念され、また、エネルギー価格全般の上昇やその他の資源価格上昇、さらには供給制約下での諸コストの上昇もあって、インフレ懸念への警戒感も高まるようになっている。
また、特に米国ではガソリン価格は政権支持にも影響を及ぼす指標となっているところ、支持率低下(11月は42%)に苦しむバイデン政権が特にこの問題に神経を尖らすようになった。
この状況下、米国を始め、主要な石油消費国からはOPECプラス会合に対して、現行計画である毎月、日量40万バレルの増産をさらに拡大するよう、様々な形で要請が発生されるようになった。
しかし、OPECプラス側は自らの市場分析に基づき、国際石油市場には十分な供給があり、不用意な追加増産は供給過剰と油価の大幅下落を招きかねないとして、10月も11月も閣僚会合で追加増産を見送った。
これに対して、ついに消費国が自ら動いたのが米国主導の協調石油備蓄放出である。
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(この記事は 2022年1月3日に書かれたものです)