22年のドル円相場を見通す
★★★上級者向け記事
円安・ドル高だった1年
2021年のドル円レートは、大きく分けて2回の円安ドル高局面があった。
すなわち、年初に一時1ドル=102円台まで円高ドル安が進行した後、3月末にかけて1ドル=110円台まで円安ドル高が進んだ。
4月から9月中旬までドル円レートは108円台から111円台の範中で小幅なアップダウンの「踊り場」で推理。
しかし、9月下旬から再び円安ドル高が進行し、11月下旬には一時1ドル=115円台まで円が下落した。
その後、新型コロナウイルスの変異株=オミクロンが見つかると主要国の株式相場が急落し、相対的に低リスク通貨とされる円を買う動きが膨らんだため、一時1ドル=112円台まで円が上昇する展開となった。
ところが12月FOMCで、FRB議長自身が明白に「タカ派」に転じたことで、再びドルが買われる地合いに戻り、12月27日に1ドル=114円91銭をつけ、現在に至っている。
1年通してみると円安ドル高が進展した年と総括できよう。
なお、21年のドル円レートの年間変動幅は12円90銭と、2020年の11円より拡大したものの、2000年以降の年間変動幅の平均値(約15円)に比べれば小幅な変動に終わった。
このように2021年のドル円レートが円安ドル高となった主因は、何と言っても米国の長期金利の上昇による日米金利差(米国―日本)の拡大である。
2021年の1度目の円安ドル高局面となった1~3月期には、米バイデン政権下での追加経済対策や新型コロナワクチンの普及などによる米景気の回復期待から米長期金利が上昇し、日米10年国債利回り差が拡大するにつれ、円安ドル高が進行したことが分かる。
また、2度目の円安ドル高局面の起点となったのは、9月22日のFOMC(米公開市場委員会)であった。
FRBは9月のFOMC声明でテーパリング(量和緩和の縮小)が「近く正当化される」と指摘し、年内の開始を強く示唆した。
また併せて公表したFOMCメンバーによるドットチャート(政策金利見通し)では、18人の内半数が2022年末までに利上げがあると予想していることが示された。
これを受けて市場ではFRBの利上げ前倒し観測が強まり、米長期金利の上昇による日米金利差の拡大観測から、円先ドル買いが優勢の展開となった。
加えて、日本において部品の調達難に伴う自動車生産の減産から輸出が弱含む一方、原油など資源価格の高騰により輸入が増加したことを受けて、日本の貿易赤字が秋口に拡大したことも9月以降の円先ドル買いを促す要因になった。
また、ヘッジファンドなど投機筋による円売りドル買いも、2021年の円安を加速させたことは間違いない。
IMM(シカゴ金融取引所)の非商業部門の円先物ボジション(対米ドル)をみると、2021年1月中旬から円買い持ち高の縮小が始まり、3月中旬には円売りポジションに転じた。
この間、大幅な円安ドル高が進行している。その後も円売りポジションが続く中、10月に入ると円売りポジションが一段と拡大し、11月上旬には2018年10月以来、約3年ぶりの大幅な売り越しを記録した。
この過程においても、大幅な円安ドル高が進行している。
なお、12月に入ると新型コロナ「オミクロン型」の感染拡大が警戒されたため、投機筋の円売りポジションの調整(円買いドル売り)が入り、ドル円レートはやや円高方向になる日も見られつつ、米経済の好調な足元データや、物価上昇データもあって、投機筋の動きを上回るドル買いも目立つようになっている。
FRBと日銀のスタンスの違い
こうした状況下、2022年のドル円レートを展開する上でカギとなるのは、日米の金融政の行方であろう。FRBは12月15日のFOMCで、テーパリングの加速を決定した。
すなわち、2022年1月から資産購入額の縮小ペースを、毎日150億ドルから毎月300億ドルに拡大する。このペースで行けば同年2月末にはFRBの新規資産購入額がゼロとなる。
さらに併せて公表したFOMCメンバーのドットチャートによると、2022年末時点で適切だと考える政策金利の誘導目標水準(中央値)は現行より0.75ポイント高い0.875ポイントとなった。
また2023年末時点では1.5ポイント高い1.625ポイント(1.625%)となった。
このことは、FRBが2022年中に3回の利上げをし、23年にも3回の利上げを実施するとの読みになる。
では日銀はどうか。2016年9月以降、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続している。
すなわち、
(1)日銀当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用(日銀に預けると利息を取る)
(2)10年国債利回りがゼロ%程度で推理するように長期国債の買い入れを行っている。
日銀は2021年12月の金融政策決定会合においても、「2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、こうした(1)、(2)の政策を継続する」との方針を堅持した。
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(この記事は 2021年12月28日に書かれたものです)