バイデン大統領、早くも黄昏の様相!
★★★上級者向け記事
BBB法案が暗礁に乗り上げた
バイデン政権は来年11月の中間選挙まで10ヵ月少々となった段階で正念場に突入したと言っていい。
経済政策の柱として連邦議会通過に全力をかけてきたバイデン大統領提起によるビルドバック・ベター計画(より良き再建計画=1兆7500億ドル規模)法案が、暗礁に乗り上げてしまった。
上院での可決が極めて難しくなったのである。民主党内で保守層に近いマンチン上院議員が採決を前にした12月19日、法案反対を表明したからだ。
上院では民主党から1人でも反対者が出ると可決できない力関係になっている。一応、マスメディアは「まだ、マンチン氏が妥協する余地はある。年初の採決に向け水面下での交渉を見守る」と論じてはいるが、実際は厳しい状況に変わりはない。
当稿ではマンチン上院議員が反対する背景や法案の詳細に至る対立点に、言及するのが目的でない。
最も重要なのは、バイデン大統領が長い議員生活や副大統領職を経たなかで、自らも語っていた「連邦議会の調整能力の高さ」がまるで通用していないという事実である。
ビルドバック・ベター法案(BBB法案)は民主党が何としても年内に成立させ、新年(中間選挙の年)のスタートを堂々とアピールする予定だった。
確かに年内に成立しなくても発案にはならず、来年1月3日からの議会再開で継続審議できる。しかもBBB法案は予算調整法に基づいて審議されることになっているから、上院審議では、共和党によるフィリバスター(審議妨害。制限時間終了による廃案化を狙う行為)は使えない。
だが、共和党が大反対しているので審議はスムーズに進まない(マンチン民主党議員も現段階で反対)。さらに、法案審議に入る前に法案内容のチェックも行われる。
予算調整法が適用されるため、予算とは無関係の移民などの項目は、法案から削除される可能性がある。削除すべきか否かを判断するのは、パーラメンタリアンと呼ばれる議会手続きに精通した議事運営専門官(議会職員)である。
また、上院が仮に法案を可決したとしても、その可決法案は11月19日に下院で可決したBBB法案と異なるゆえ、下院は上院可決法案を改めて可決しなければ、BBB法案はバイデン大統領の机には届けられない。
客観的に分析しても、マンチン議員の法案修正要求の多くを民主党全体と、大統領が容認する以外に可決の道はない。
しかし、マンチン議員の要求は民主党の進歩派や左派が容認できるものではないだけに、可決は絶望的といえる。
瀬戸際に追い込まれた
バイデン大統領は政権発足から半年程は、どの大統領も共通のことだが、国民の期待先行で支持率は高い。バイデン氏も57%からのスタートだった。
だが8月のアフガンからの拙速で強引な米軍撤退と南部国境での危機的な不法移民問題が浮上し、一気に信望、信頼を失っていった。
また、新型コロナウィルスのパンデミックはなかなか収束せず、物価は上昇中だ。
前任者ドナルド・トランプは、2024年の大統領復帰に向けて、早くも選挙活動を始めたかのような政権攻撃を繰り返している。
政治情報サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、これまでの仕事ぶりを支持する人はわずか42%、政権発足時から15%ポイントの急降下だ。
与党・民主党は議会で過半数ぎりぎりの状態で、バイデンの支持率急落に政治的盟友たちは危機感を覚えている。
バラク・オバマ元大統領の顧問だった政治評論家のバン・ジョーンズ氏は、「民主党は崖っぷちをのぞき込んでいる」とCNNに語った。
歴史的に中間選挙は1期の大統領にとって難しい闘いだ。オバマ政権1期目の2010年、民主党は下院で63議席を失い、現職大統領の与党として1938年以来の大敗を喫した。民主党内には、22年はさらにひどいことになると懸念する弱気派もいる。
コロナワクチンの接種が順調に進んでいた今年前半の民主党は、楽観論に包まれていた。バイデンは独立記念日の7月4日を、米国人が通常の生活に戻れる祝祭の日と決定。
側近たちは大統領当選の決め手となった新型コロナ問題で強力な追い風が吹くと考えていた。だがその後、デルタ型変異株が広がり、感染者と死者が再び増加。バイデンの支持率は急降下し始めた。
確かに1兆ドル規模のインフラ投資法は11月15日に成立した。しかし冒頭の通り、BBB法案が頓挫するとなると意味が違ってくる。
10月28日、バイデンはBBB法案の規模をそれまでの3.5兆ドルから1.7兆ドルと半減させた。民主党の挙党的賛成が得られないと判断したからだ。
「私を含め、誰も望んだものを全て手に入れることはできなかった。だから妥協し、合成形成した」と言ったバイデンだったが、その妥協的合意もできないとなれば深刻である。
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(この記事は 2021年12月21日に書かれたものです)