オミクロン・ショックは拡大するのか
★★★上級者向け記事
26日の米国市場が一変!
南アフリカで新たなコロナウィルス変異株が確認されたことを受け、投資家は安全資産とされる米国債に殺到した。
FRBによる利上げ見通しも、一気に修正を強いられることになろう。
米国10年債利回りは、感謝祭前(11月24日)の1.6376%から26日には1.477%まで低下。
これは1日(実際は半日)の低下幅としては、コロナ禍が始まり市場が最初の混乱に見舞われた2020年3月以降でも際立った大きさだ。
26日のフェデラルファンド(FF)金利先物市場の利回り(市場の政策金利予想を反映する尺度)も下落した。
利上げ開始が従来予想より後ずれすると市場がみなしていることを意味し、多くの投資家が2022年末までに25ベーシスポイントの利上げが2~3回行われると予想を変えた(22日時点では3~4回の見方だった)。
ユーロ圏と英国の金利予測を示すデータも同様に下振れした。
新たなコロナ変異株の感染が急速に広がっていると南ア当局が発表すると、市場には動揺が広がった。
専門家らは、変異が多くなれば感染力が高まる可能性があるほか、ワクチンも効きにくくなる恐れがあると指摘する。
もちろん、まだ第一次情報の段階ゆえ、変異型がどのように広がるのかや、感染した場合の影響などは五里霧中ゆえ、必要以上に動揺すべきではないが、これまでに世界で2億6千万人の感染者と518万人もの死者を記録し全く想定外の、大パンデミックとなったコロナ禍だけに、市場があわてふためくのも止むを得まい。
欧州連合(EU)は26日、新たな変異株への警戒を表明し、アフリカ南部からの航空便乗り入れ禁止を勧告すると発表した。
一部加盟国は英国やシンガポールなどに続いて、すでに制限導入に踏み切っている。
市場では、制限が広がれば世界的に成長見通しが後退するとの懸念が強まっている。
実際、この変異株によって景気回復が阻害されれば、各国の中銀は方針を大きく転換し、さらなる市場への資金供給など金融緩和策への逆戻しを迫られることになろう。
利上げ観測の修正を後押ししている主な要因はインフレの主因であるエネルギー価格の急落だ。
主要指標のブレント原油先物は足元で約9%安の1バレル=73.5ドル(26日)と、9月以来の安値まで押し戻されている。
インフレや金融引き締めの可能性に関心を向けていた市場は一夜にして梯子を外され、急遽、シナリオ修正態勢に転向を余儀なくされつつある。
その一方で、変異株の脅威がどれ位であり、各国、地域の水際対策(入出国の制限)が、どこまでスピードアップできるかなども定かでなく、シナリオ修正の全体像も描くことができないでいる。
暗黒のブラックフライデー
感謝祭の祝日に伝わったウィルス変異株出現ほど、投資家にとって大局的な視点を与えるものはないだろう。
暗黒のブラックフライデーとなった。
ボツワナと南ア共和国で最初に確認された新たな変異株が、その後、南アで猛烈なスピードで感染が拡大し、しかもワクチンへの耐性を備えている可能性があるとの情報が伝えられるにつれ、一気に市場のリスクレベルが上昇した。
世界ではすでに、両国や近隣国を「危険リスト」に指定し、入国者に隔離を義務付ける動きが始まった。
しかも欧州では従来の変異ウィルスがワクチン接種後の免疫効果がピークアウトしてきた段階で、再び猛威を振るっているだけに警戒も一段と強まることが予想される。
投資マネーは株式(とりわけ旅行関連)や高利回り社債、コモディティー、新興国通貨といったリスク資産から流出し、国債や金、スイスフラン、円など安全資産へと避難した。
これはいずれも、最も差し迫った懸念を回避するための典型的な投資行動だ。
これまで変異株=「デルタ株」の出現でも強気相場が崩れなかったのは、ワクチン接種のおかげで経済の正常化が一定ながら図られたためだ。
新たな変異株(以下、オミクロン株)はワクチンの免疫反応をすり抜けるリスクが一段と高いとなれば、経済がさらに深刻な打撃を受ける可能性を織り込む必要が出てくる。
売りは新年にかけて増幅する恐れがある。
投資家はこの時期、節税目的や運用成績を良く見せるためアンダーパフォームしている資産を手仕舞い、押し目買いも渋るようになる。
通常なら新年1月にはこうした流れが巻き戻されるが、コロナを巡る懸念でひと冬を通じて市況が荒れ模様になることもあり得る。
とはいえ、今回のオミクロン株の出現から投資家は長期的な教訓を得ることができそうだ。
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(この記事は 2021年11月28日に書かれたものです)