米中関係の中での日本の在り方

★★★上級者向け記事
バイデン政権の拙い外交・安全政策
米国同時多発テロから20年となる今年9月を前に、8月末までとしたアフガニスタンからの撤退を米軍が急ぐ中、テロの温床とならぬよう米欧日などで支えてきたガニ政権が崩壊、国外退避で大混乱となり、米国内外で批判が起きた。
バイデン米大統領自身も自らの判断ミスであったことを自省していることは、その後の拙速な国内外政策の打ち出しで立証されている。政権発足後わずか半年で「バイデン大統領の限界」説を強めることとなった。
9月中旬にバイデンは、中国を念頭に米英豪がインド太平洋で協力する安全保障の枠組み=AUKUS(オーカス)の結成を表明。
米国から原子力潜水艦技術の提供を受けることになった豪州がフランスとの潜水艦建造契約を破棄し、フランスが猛反発したことは既に世界中のプレスでスクープ記事化した。
AUKUSの結成表明は東南アジアにも波紋を広げた。米中がにらみ合う南シナ海を中小国が囲むこの地域は、緊張の高まりに敏感だ。マレーシアやインドネシアの政府は「地域での軍備競争」の観点からすぐさま懸念を示した。
こうした米国発の混乱が国際社会に広がる中、9月24日にクアッド首脳会議がワシントンで開かれた。クアッドは「四つ子」も意味するとはいえ、参加国それぞれに異なる思惑が錯綜していた。
アメリカ
米国は、3月のリモートに続き今回の対面でのクアッド首脳会談開催を主導した。中国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」とし、民主主義や法の支配などの価値観を共有する国々と連携する観点からクアッドを重視する。
日本
日本は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)という構想を主唱する立場からクアッドに参加する。中国に対しては、領域を脅かす動きは日米同盟で牽制しつつ、隣国という近さや経済関係の深さから間合いに腐心する。
オーストラリア
豪州は、隣り合う東南アジアに中国が影響力を強めることへの懸念から、米国の同盟国としてクアッドを歓迎。昨年来、中国のコロナ対応に国際調査を求めたことや、中国から農産品輸入関税を高められたことで関係が悪化した。
インド
インドは、主要各国との全方位外交を展開してきており、クアッドを通じた日米豪との連携強化は歓迎するが、最大の貿易相手国=中国と対立が深まることは望まない。ただし中国とは昨年、国境係争地域で両軍が衝突し関係が悪化した経緯がある。
このように四カ国には温度差があるが、最も熱の高い米国が最も熱の低いインドのモディ首相の参加を取り付け、自民党の内紛の末にすでに辞任の意向を示していた菅首相まで招いて強引に開いたのが今回の首脳会談だった。
そして菅氏の慌ただしい訪米にあたり日本政府を悩ませたのが、直前のバイデンによるAUKUS結成表明と東南アジアから示された懸念だった。日本が重視するFOIPは、クアッド同様に民主主義や法の支配を重んじるが、AUKUSのような安全保障の枠組みではない。
インド太平洋の国々が国際社会に広く通じるそうした価値観で連携を強め、中国がそこに挑もうとするなら自制を促す一方で、中国が変わるなら(実際は100%変わらない)参加も辞さないというスタンスにある。
そこでカギになるのが、インドと太平洋をつなぐ要に位置する東南アジアだ。この地域の国々が中国に軍事的に押されていることは、中国が南シナ海で国際法に反して勢力国を広げていることで明らかだ。
ただ、そこに「中国包囲網」を目指すような安全保障の枠組みで対抗することが効果的か、どうかについては、地域にコンセンサスはない。
米中対立の激化(ただし、表舞台)はASEAN(東南アジア諸国連合)という形で、何とか一体性を保ってきた諸国に踏み絵を迫ることになりかねず、経済的にも影響力がある中国側へ諸国が雪崩を打つ可能性もある。
そうして南シナ海で中国の影響力が強まれば、FOIPの狙いは崩れ、原油輸入の9割が南シナ海を経由する日本の対外戦略は大きく目算が狂う。
だからこそ日本は、FOIPが安全保障の枠組みと見られぬよう腐心し、クアッドもFOIPを具体的に進める場と位置付ける。
そのクアッド初の首脳会談が開かれる直前に、AUKUSの発足が発表されたのである。クアッドも同様に見られて東南アジアの不安を高めてはいけない、というのが日本政府の悩みだった。
バイデンの政治的・戦略的焦りが、最も重要と位置付ける東南アジアでの行動に出ているとしか思えない。
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(この記事は 2021年11月14日に書かれたものです)