不安定化を増すトルコ

OPECプラスの11月の会議を前にした10月21日、世界銀行は商品市場の見通しを発表した。
それによると、原油価格は2021年の平均が1バレル=70ドル(前年比70%上昇)、2022年には74ドルと上昇を続けるが、2023年には米国のシェールオイル生産やOPECプラスの減産の撤回などの理由で、1バレル65ドルに落ち着くと予想している。
先進国ではCovid-19のパンデミック対策の効果が現れ経済活動が回復しつつある中で、エネルギー需要が高まっているが、2022年下半期には、需要はパンデミック前の水準に戻ると予想されている。
こうした原油価格の変動は、残りの任期2年を切ったエルドアン大統領が統治するトルコの政治・経済にも影響を与えている。
以下では、最近も10カ国の大使の国外追放を指示するなど対外的に強硬な姿勢を示しているエルドアン政権の動向について検討する。
本稿の結論を先に述べれば、同大統領のこのような強硬な対外政策には、国内経済の悪化からトルコ国民の関心を逸らす意図があると考えられる。
したがって、今後もエルドアン政権が、対立をあおるような対外行動をとる蓋然性は高く、さらなるリラの信用低下を招く恐れがある。
エルドアン政権下のトルコ経済
10月4日のトルコ統計局の発表によると、9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で19.58%であり、8月の19.25%を上回った。
トルコ国民は、食糧価格など生活費の上昇に不満を募らせている。エルドアン大統領は、2019年には食糧価格の上昇を「食糧テロ」と呼び、市町村が運営する野菜直販所を開設させた。
また、2020年には、不当な値上げが行われているとして、食品・小売業者の便乗値上げを調査させ、9月には農業協同組合に対し、適切な価格で食品を提供する店舗を1000店開設するよう命じている。
しかし、現在もトルコの物価上昇傾向は続いている。この状況は、エルドアン政権が「高金利はインフレを抑制せず、むしろ促す」と主張し、物価上昇の中で借り入れコストを引き下げさせていることと関係している。
この政策に対し、トルコの経済学者たちから批判の声が上がる中、10月14日、エルドアン大統領は中央銀行の副総裁2人を解任した。
とりわけ、国際的に注目されたのは、ウグル・ナミク・クチュク氏の解任である。同氏は、国際金融界でよく知られた人物で、中央銀行が外国投資家と行う定期会議の主要メンバーであり、トルコの中央銀行の外貨準備をリラの買い支えに使うことに反対を表明していた。
この人事を受け、トルコの通貨リラは1ドル9.19リラにまで下落した。現在、外国投資家の多くがトルコから資金を引き揚げており、リラ安は国際経済にはあまり影響を与えないが、トルコの国内経済にとっては大きな打撃となっている。
政策金利の引き下げ
中央銀行の金融政策委員会は、景気刺激策を求めるエルドアン大統領の圧力に屈するように、10月21日、政策金利を18.00%から2.00%引き下げ、16.00%とした。
格付け会社フィッチ・レーティングスのトルコ担当者エーリッヒ・アリスベ氏は、翌22日のロイター通信のインタビューに、「トルコの金融緩和は時期尚早である」「中央銀行には急落したリラを防衛する余力がほとんどない」とコメントしている。
この政策金利の引き下げにより、トルコ通貨は、1ドル9.50リラの安値を付けた。トルコの外貨両替所や銀行では外貨を買う際、0.2%が課税される。
通貨安により、人びとは課税を避けるため、これら以外での外貨取引に動いており、取引量が減少した小規模な外貨両替所が封鎖に追い込まれるという影響も出ている。
リラの下落はトルコ国内に物価高と品不足を引き越しているが、そこに、アフガニスタンからの難民流入問題が加わり、与党の公正発展党への国民の不満はさらに高まりつつある。
エルドアン大統領の強気の対外政策
10月23日、エルドアン大統領は、公正発展党関係者の会合で、「トルコ経済に対し、いろいろな議論はあるが、遅かれ早かれ、トルコが世界経済のトップ10に仲間入りするのは必然だ」と述べ、自国の経済成長の高さを強調した。
経済問題で強気の姿勢を示すエルドアン大統領は、欧米との関係でも問題を抱えている。
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(この記事は 2021年11月1日に書かれたものです)
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