毛沢東政権化を狙う習近平
★★★上級者向け記事
とにかく、これからの中国習独裁政権の行くえは世界経済・社会に大きなインパクト(サプライズやブラックスワンを含む)を与えることになろう。
「8.17習講話」(共同富裕論)のことである。明らかに中国の歴史的ドクトリンとして位置付けられる。8月29日、人民日報や新華社通信、解放軍報などはそれぞれの公式サイトで、「革命宣言文」を同時に掲載した。
当初、個人のブログに掲載された、この文章が党中央直轄の主要メディアによって、一斉に転載されたのは極めて異例だが、さらに驚いたのはその内容である。
文章はまず、「中国では今、経済・政治・文化などの各領域で深い変革、すなわち革命が起きている」と断じた上で、「この革命は資本集団からの人民群集への回帰、社会主義本質への回帰だ」と強調した。
そして、「人民を中心とするこの革命を阻止する者は全部切り捨てられよう!」と、あたかも政治粛清運動の発動を宣するかのような激しい言葉を発している。ここまで公然たる文章になると「第二の文章」宣言文に等しいとしか言えまい。
鄧小平理論の相対化こそが狙い
かつて、中国の共産党規約及び憲法に登場する歴代指導者の名前は、建国の指導者である毛沢東と、改革開放の総設計師とも称される鄧小平だけだったが、2017年10月に開催された第19回党大会を受け、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」として習近平の名前が明記された。
「思想」に名前を冠して掲げられるのは毛沢東以来であり、鄧小平は「理論」としての名前が登場するに過ぎない。
また、2期10年とされていた国家主席の任期を自らの権力で撤廃させ、2012年に事実上、“絶対権力”を完全把握した習近平が、2023年以降も国家主席の地位にとどまることが可能となっている。
党総書記、中央軍事委員会主席は明文化された任期については「任期の規定はない」(実際は鄧小平主席時に党運営の基本理念として1期5年、最大2期10年と定められてきた)として、党・国家・軍のトップ、つまり中国の最高権力者として習近平が君臨し続ける体制を整えたに等しい。このこと自体、既に鄧小平の党理念を否定したことを意味する。
さて、この習近平の「特別扱い」は、2021年7月(8.17講話の直前)に実施された中国共産党の創立100周年記念の行事に際しても確認された。
6月28日夜、北京五輪のメイン会場として使用された国家体育場(通称=鳥の巣)に於いて歌、踊り、芝居等を交えた大規模なイベントが実施され、習近平らの最高指導部(拡大党中央政策委員メンバー)が観覧した。
そこで行われた演劇では、党の歴史が以下の4つに区分された。
- 1921年~=中国共産党が誕生し、国民政府との内戦、抗日戦などを経て全土を制圧していく時代
- 1949年~=建国式典が行われ、朝鮮戦争などを経て社会主義国家を建設していく時代
- 1978年~=改革開放が始まり、北京五輪、上海万博などを経て経済的発展を遂げる時代
- 2012年~=習近平を核心とした指導により党・国家が歴史的変革を迎え、強国へと変貌する時代
つまり、鄧小平、江沢民、胡錦涛は(3)でまとめられ、毛沢東と習近平のみが個別の時代区分化されていることがわかる。明らかに習自身の指図による演劇だった。
その証拠に、同月に開館された中国共産党歴史展覧館における展覧第一弾でも、同じ時代区分がなされた。
「毛・鄧」なる党の二大指導者を中心とした歴史観から「毛・習」に変更させる仕掛けがアリアリと見えてくる。
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(この記事は 2021年9月21日に書かれたものです)