金利のコンセンサスを探る

西原宏一著 『30年間勝ち続けたプロが教えるシンプルFX 』(SPA!BOOKS)より一部抜粋しています。すべてを読みたい方は、こちらをご覧ください。
金利の見通しに注目する
FXが取引対象とするのは為替市場ですが、 為替を取引する以上、 意識せざるを得ないのが「金利」と 「株」 です。
今でこそ日米欧ともに超低金利政策で、 政策金利よりも非伝統的緩和策の導入などに代表される金融政策の内容が注目されていますが、 主要国の金融緩和が終わり 「通常営業」 へと戻れば、 政策金利の引き上げ・引き下げの見通しが為替市場の大きな材料となるでしょう。
政策金利に対する考え方はシンプ ルで、「金利の上がりそうな国は買われる・金利の下がりそうな国は売られる」 ということになります。ここで大切なのは、実際の金利の上げ下げよりも、 将来の金利見通しが材料になりやすいということです。
僕らのような短期ト レー ダー はともかく、 中長期的な資金は 「低金利な国から高金利な国 へ」 と流れるのが基本です。短期取引が中心の僕であっても、金利がこれから下がりそうな通貨を買いたいとは思いませんし、金利の見通しが弱気な通貨は為替市場でも売られがちになります。
金利の見通しは、実際の政策金利以上に頻繁に変わります。GDPやインフレ率などの経済指標や要人発言などによって、「次回の中銀会合では金利が上がりそうだ」「いや金利を下げるだろうが、 下げ幅は0.25 % ではなく 0.5% になるかもしれない」 といったような 「上がるか・下がるか・据え置きか」 の見通しだけでなく、「上げ幅・下げ幅」 の見通しも変わっていきます。 その変化に、為替市場は敏感に反応するわけです。
ちなみに金利では 「bp」 という単位がよく使われます。「ベー シス・ポイント」 の頭文字で1bpは0.01%ですから、「0.5%下がるかもしれない」というときは「50bp下がるかもしれない」と言ったりします。
「政策金利と為替」 について過去の事例でご紹介しましょう。材料は豪ドルです。オーストラリアの中央銀行(RBA)は、2012年を通じてもずっと金利を引き下げていました。

年初は4.25%あった金利が年末には3%になりました。 個人的に豪ド ルはよく取引する通貨ではあるのですが、 こうした金利引き下げ局面では買いから入る意欲が薄れ、むしろ「どこで売ろうか」という目線が中心となります。
ところが 11月に発表された消費者物価指数が堅調だったことから、 インフレ懸念が台頭。 それまで市場のコンセンサスとなっていた、 豪ドルの追加利下げ観測が急速にしぼみます。
強烈なインパクトとなったのは、「次回RBAで0.5%の利下げ」 を予想していたあるエコノミストが、「据え置き」 へと見通しを変更したことでした。
これにより、 実際には 「据え置き (変更なし)」であるにもかかわらず、市場の目線は 「利下げの可能性なし」「次は利上げかもしれない」 と上向きへと変わり、実際、市場もこのとき急上昇しました(図5)。
金利のコンセンサスは先物市場で
金利に限らず、 こうした見通し、 大方の市場関係者が 「こうなるだろう」 と一致した意見は「コンセンサス」 と呼ばれます。
何がコンセンサスになっているのか、 その勘どころをつかむのは、 最初のうちはなかなか難しいかと思いますが、 先ほど紹介したような欧米の投資家が日常的に目を通すメディアが大きなヒントになるでしょう。
金利についてのコンセンサスであれば、 先物市場が非常に参考になります。OIS(オー バー ナイト・インデックス・スワップ)と呼ばれる金利先物市場があり、 その動向が市場関係者のコンセンサスを示してくれます。
個人投資家がOISにアクセスするのは難しいのですが、 GI24のようなFXニュースでは、 中央銀行の会合前に 「予想織り込み度」 として紹介されています。
こうした 「予想織り込み度」 はのちに紹介する 「セル・ザ・ファクト」 を利用したト レー ドにも非常に役立ちます。 市場参加者が金利の先行きをどう見ているかは、 通貨の動向を占うのに非常に大切な要素です。