財務省に牛耳られる岸田政権

財務省・財務官僚の劣化
財務省と言えば、日本経済の置かれた状況を全く無視して増税・緊縮に突き進む、悪の権化のような官庁であるという認識が、以前と比べて大きく広がってきたように思われる。
とは言え、世間一般に目を向けてみると、まだまだ「財務省=霞が関の超エリート官庁」、「霞が関の最強官庁」というイメージが流布しており、財務省だから間違うはずがない、財務キャリア官僚は優秀・有能だから彼らが企画・立案した政策や法案は、正しいはずだといった認識も根強く残っているように思われる。
それが証拠に、テレビ番組に登場する元キャリア官僚のコメンテーターの中でも、財務省出身は特別扱いされ、その発言は、たいしたことを言っていなくてもさも素晴らしいことのように受け取られる。
ましてや「東大法学部出身」となると、正にヒエラルキーの頂点人物として紹介され、崇められる。しかし、その実情はと言えば、端的に言ってそうした認識の逆である。
永田町界隈ではキャリア官僚の劣化、質の低下が認識されて久しいし、ベテランの国会議員秘書の間でもこの「劣化」認識は共通のものだが、財務官僚についてそのことがより明らかになったのは、2022年度第二次補正予算編成や増税を巡る騒動においてである。
補正予算編成を巡る動き
補正予算編成を巡る動きを簡単に振り返ってみよう。
同予算案は、その規模をどの程度とするかに焦点が当てられた議論が先行しており、与党である自民党の政務調査会において議論が積み重ねられていた。
「責任ある積極財政推進議連」は、真水での50兆円規模を提言する等、党内積極財政派の議員たちは21年度の補正予算の規模30兆円を下回ることは認められないという姿勢で議論に臨んでいた。
政調会長である萩生田衆院議員は積極財政推進に理解があり、相当程度の規模が確保されることが期待された。
ところが、鈴木財務相は、まだ議論の最中であるにも関わらず、補正予算の規模は24兆円程度と決まった旨を岸田首相に報告するという挙に出た。
さすがの岸田首相もおかしいと思ったのか、萩生田政調会長に電話で確認を入れた。まさに政務調査会で議論しているまさにその時であった。萩生田氏は会を中座し、受けた電話で当然まだ決まっていないことを岸田首相に伝えた。
その後、萩生田政調会長は財務省の担当者を叱責し(彼らは真っ青な顔をして凍りついたという)、最終的には29兆円となった。
根回し、調整力劣化のキャリア官僚
要するに、財務省は与党内の手続を無視し、それを飛ばして24兆円という数字を勝手に決めて、鈴木財務相にさも決定したかのように報告し、それを鵜呑みにした鈴木財務相が岸田首相に「決まった」との旨を報告することで既成事実化しようとしたわけである。
「非常に上手いやり方だ、さすがは財務官僚」などと思ってはならない。
霞が関の官僚に求められる能力の一つは政策の企画立案能力であるが、もう一つ、いやそれ以上に求められるのが調整能力である。ロジとも呼ばれる。
省内関係部局間を調整し、関係府省間を調整し、与党や両院の所管委員会の各委員にも根回しをして調整する。この調整が上手くできなければ、せっかく立案した政策・法案を施行することは困難になる。
当然のことながら、調整は慣習的なものも含めて、定められた手続に則って進めなければならない。
今回の財務キャリア官僚たちは、その調整を軽視して、端的に言って姑息かつ強引に動いた。最もやってはいけないことをしでかしたわけであり、これで与党、少なくとも政務調査会における財務省の信頼は地に堕ちたと言っていい。
官僚として与党からの信頼を落とすことは絶対に避けなければならないはずなのだが、かつての大蔵官僚ならば、この手のヘマをすることはなかっただろう。
彼らはまさに調整に長け、丁寧に調整、説明、根回しを行い、与野党議員からの信頼を落とすようなことはしなかった。
この一連の出来事は財務官僚の調整能力の著しい低下を象徴するものである。
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(2023/03/13の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。)
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