第三次習近平政権の異様な姿

異様だった党大会最終日の動画
胡錦涛前総書記が中国共産党大会(10月16日~22日)の最終日に壇上で、2人の職員によって退場させられた画像がシンガポールのテレビ局CNAなどから流された。
これは、明らかに共青団派への追放・強いては習近平による「鄧小平理論」(改革・開放)の封殺を象徴した一瞬だった。
この画像について10月28日付の産経新聞(北京の三塚記者)が、興味深い解説をしているので転載しておこう。
党大会を経て発足した3期目の習近平指導部を巡り、胡錦涛前総書記ら党長老に示されていた人事案が最終的に大きく差し替えられたとの見方が浮上している。
李克強首相らは新指導部に選出されなかったが、党内事情に詳しい消息筋によると、今夏の時点では李氏らが含まれる人事案が示されていたという。
長老たちは「不意打ち」を食らった形で、党大会開幕式での胡氏の途中退席の背景になった可能性がある。
8月前半に党幹部や長老が集まった「北載河会議」で、次期指導部人事の調整が行われた。その時点では、李氏や汪洋・人民政治協商会議主席を含む、党内のバランスをとった人事案が示されていたという。
今夏時点で党関係者の間では、最高指導部を構成する政治局常務委員(7人)の入れ替えは「小幅に終わる」との見方が大勢だった。
しかし、最終的に新たに常務委員に選出されたのは過半数の4人を数えた。しかも全員が「習派」で、情報筋は「党長老らにとっては不意打ちだったようだ」と指摘する。
国営新華社通信は10月24日、新指導部人事の決定過程を伝える記事を配信し、9月29日の政治局会議で幹部人事が了承されたと報道。
「一部の指導者は自発的に引退を表明し、比較的若い同志を昇格させた」と伝えた。李氏や汪氏は自ら身を引いたと示唆することで、人事への批判を封じ込める狙いがうかがわれる。
党長老らが、どの時点で最終的な人事案を知らされたのかは判然としない。ただ、胡氏が自身と同じ共産主義青年団(共青団)出身の李氏や、汪氏が最高指導部から外れたことに不満を抱いたとみるのが自然だ。
ようするに、北載河会議(8月)のときの人事案と明らかに違う人事(胡氏の壇上のテーブルに置かれた赤いファイル)を見て、「これは、我々が見た人事案と違うじゃないか!どうなっているんだ」と習氏に問いただしたところ、すぐに後ろから係官が寄ってきて、赤ファイルを取りあげるとともに、会場から連れ去った、というのが真相ということだ。
共青団の台頭を阻止
党大会において習氏は完全な勝利を収めた。
中央政治局常務委員(トップ7)を同氏に近い人物が独占し、ライバルの共青団系有力者を一掃した。事前の報道予測が全て間違っていたことは何を意味するのか。
一般的には「共青団とのポスト争いは引退した長老の意向も反映されるため、すべて習氏の思惑通りになるものではない」との見方がセオリーとして定着していたからだった。
今回の異例なのはそれだけではない。
党総書記の任期は2期10年までという「独裁化阻止のための慣例」(鄧小平が唱えたもの)を覆し、習政権は3期目に突入した。幹部引退のルールについては、党大会時に67歳なら続投可・68歳以上は引退(七上八下)とする不文律も反故にした。
69歳の習氏自身が続投したほか、他の幹部任用も意のままになった。先代の胡政権までは明確にしていた後継者も置かず、習氏は終身党トップで居続けられるようになった。
中国共産党の統治は、もはやこれまでの延長では語れない、新たな次元に踏み込んだ。それにしても、今回の共青団排除の中身は驚くべきものだった。
事前予想では、当時の序列2位の李克強氏(67)は常務委員として残り、2023年3月に首相の任期を終えた後も、全人代毛受委員長など要職に就くとみられていた。
序列4位だった汪洋氏(67)は次期首相の有力候補とされていた。両氏はいずれも引退年齢に届く前に党序列上位205人の党中央委員からも外れ、引退に追いやられた。
また、常務委員入りが有望視されていた故春華氏(59)は、党序列上位24人の政治局委員から外れる降格となった。
ここまで徹底した共青団の追い落としが行なわれたのはなぜか。一つは、習氏の政治的危機感が強まったためとみることができる。
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(この記事は 2022年11月13日に書かれたものです)
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