文革と戦狼外交の時代に突入
第二の毛沢東を目指す習近平3期目
習近平3期目がスタートした。
どの様な分析が正しいのかは、まだ定かではないが大方の軸足は見えてきている。現段階では人事と習自身の言行を総合し、次のようなことが言えるのではないか。
(1)集団指導体制が維持
党主席制は採用されず、総書記制、すなわち集団指導体制が維持されたが、その代わりに党中央のほとんど全てが習近平派と目される人物になり、女性の委員も不在となった。
多様な集団が含まれるのが「団結」ではなく、習近平派一色に染めるのが「団結」だということを示した。
(2)団結を協調した理由
演説(10月23日の1中総)でも人事でも団結を協調したのは、2049年の社会主義現代化強国、2035年の社会主義現代化の目標を達成する上で、黄信号が灯っていると思っているからであろう。
コロナも含めた経済失速、米国や先進国からの圧力などがその原因だ。だから、共産党の、そして国民の、さらには中華民族(筆者註・中華民族という民族は存在しない)全体の団結を強化しようとする、これは危機感の現れである。
(3)後継者の指名なし
後継者指名がなされなかった。新常務委員が2名であれば事実上の後継者とみなされたが、実際は4名であった。
また中央軍事委員会も習近平以外の文官はいない。これにより、習近平が今後10年(79歳)間、総書記を継続することになったのも同然である。
(4)慣例を破る
さまざまな慣例を破ったことである。68歳定年制も、副首相経験者が首相になるという慣例も破られそうだ(李強常務委員が就任か)。
江沢民、胡錦涛以来の党内民主化は人事の面では潰えた。その結果世代交代は遅れ、1970年代生まれが中心の第七世代は政治局委員には入らなかった。
習近平は文革を体験していない第六世代以下に不信感を有している可能性が高い。
(5)戦狼外交の時代へ
経済、財政担当者の問題である。李克強、胡春華をはじめ改革派は一掃され、何立峰はいるものの、懸案となる経済を担当する人事体制が明らかに弱体化した。
「共同富裕」の共同、つまり分配ばかりが強調されれば、改革開放路線は抑制される。改革開放が特に西側諸国との協調に結びつくことを考えれば、これは外交にも著しく影響する(戦狼外交色が一段と強まる)。
(6)台湾問題
台湾については言葉の上での変化はない。2049年を目標に「戦わずして勝つ」が基本線。中国は、台湾人を中華民族の一部と見なし、「夢」を一緒に見ることを前提にするから、建前上、台湾社会を取り込むことを目標にする。
すなわち、軍事圧力を高め続け、サイバー攻撃、ディスインフォメーションで社会浸透を行い、経済制裁などを与え続け、台湾社会が統一に向かうように強引に仕向けることだ。
この政策に効果がないと習近平が思ったときだ。その時、軍事圧力のレベルを上げ始めるという方針である。
(7)異分子排除
このような人事への党内の不満、3割近い失業率や経済失速、コロナ対策などへの社会の不満への対処だ。
掌握すると、ビッグデータや全過程民主などで社会の不満を事前に吸い上げ、同時に「国家の安全」を盾に、デジタル監視や基層社会レベルにめぐらした統治網を通じて異分子排除を行うと推測される。
だが、「幸福な監視社会」は共産党が社会に豊かさや便利さを与え続けるから成立する。それが新体制で続けられるのか。
習近平の夢が、共産党員の夢、中国の人々の、そして中華民族(?)の夢と一致することは果たして可能なのか 。
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(この記事は 2022年10月30日に書かれたものです)
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