米金利急騰!ドル円、米株はどうなる?

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バイデン大統領とパウエル議長
昨年からアメリカは他国に比べてもインフレが進んでいたので、ずっとアメリカの金利が上がると言われていましたが、意外に上がりませんでした。アメリカの友人も「車もマンションもガソリン価格も上がっているのになぜ金利が上がらないんだ。長期金利がインフレと連動していない」と言っていましたが、年初にいきなり上がりました。
FRBは「インフレは一時的」と言いながら、なかなかインフレに対処しないという状況が続いていましたが、これに関してバイデン大統領とパウエル議長の間にせめぎ合いがあるというのが面白かったのでご紹介します。
インフレの高騰で一番困っているのがバイデン大統領。アメリカ国民はバイデン政権のせいだと言っていて、バイデン大統領の支持率は急低下していました。
他にも支持率が下がっている理由のひとつが、アフガン撤退の時にアメリカ兵を残さず連れて帰ると言っていたのに、結局は兵隊を残して撤退してしまったこと。
もうひとつ、 トランプ元大統領の時には原油価格をある程度制御できていましたが、バイデン政権になってからはOPECに制御するする力を奪われてしまい、原油が上がって、ガソリン価格も上がってインフレになったこと。
これに対してバイデン大統領は「インフレの改善が私の最優先課題」と言って、2021年11月に石油備蓄の放出を行いました。その後、オミクロンの報道が出たので原油は下がったのですが、バイデン大統領はそれを自分のお陰だと言ったので、反対に反感を買いました。
バイデン大統領は、FRBが動かないからインフレを止められなかったとも言っています。これは、FRBが「インフレは一時的」としてなかなか金融緩和縮小を開始しなかったので、自分のせいではないと言いたいわけです。
パウエル議長もこのあたりのことは理解したうえで、クリスマス商戦の好調さや、米株の底堅さを確認して、金融緩和縮小を加速させるのではないかというのがファンド勢の読みでしたが、いきなり年初からドカンと上がってきました。
年が変わり、ファンド勢も一旦リセットがかかり、プロフィットもロスもないフラットな状態で始まりました。彼らの思惑のとおり、FOMC議事録ではタカ派な内容が出たので、昨日は米10年債利回りが1.70%まで急騰しています。
10年債金利は、昨年の秋ごろにダブルボトムをつけ、今年の2月頃に1.7%を超えて、夏ごろに2.0%を超えるのではと考えていましたが、いきなり1.7%を超えてきました。
米10年債利回り

金利急騰によってドル円は上がっていますが、10年債金利が1.7%を超えてきたことによってマーケットが気にしているのは、実は米株です。
昨年の3月に1.7%を超えた時にはドル円は急騰しました。今回はまだ金利は3月の高値を超えていませんが、ドル円は3月よりも上がっています。
5年債のドル金利、利回り上昇がドル円を上げると言われていますが、現在は5年債も10年債も全部上がっていてドル円も116.35円まで上がっています。
ドル金利が上がると、ドル円もずっと上がり続けるのか?
ドル金利が上がることによって、マーケットが気にしているのは為替ではなく米株です。
アップルが3兆ドル企業になったように、昨年のような金融相場においてはハイテク系の株が強いですが、自分がみているSequential(シーケンシャル)のチャートだと目一杯のところまで上がっていました。
ナスダックの週足も、年明けに金利が上がったことによって大きな陰線がついて高値のトップアウトを示しています。
ナスダック週足

このまま今年、金利が上がっていくとなると、米株にとっては良くないということになります。
昨年もそうですが、為替はAIやHFT (high frequency trading=高速取引) が入って、人間でないbotがトレーディングすることが増えています。
例えばニュージーランドの金利が上がって先物市場で織り込むと、実際に金利が上がるまではキウイは底堅く推移するはずですが、AI主体にこうした報道は金利先物市場であっというまに織り込まれてしまい、実際に利上げがおこなわれるまでに反落してしまうようなことが頻発しています。
実際の利上げはもっと先だと言っても、金利先物市場で織り込んだら為替は上がらなくなってしまいます。ニュージーランドの金利は2.0%ぐらいまで上がる予想ですが「織り込んだのがいつか?」というぐらいキウイは全然上がりません。
RBNZ(ニュージーランド準備銀行)が今後ハト派になったら落ちるのではないかというのも、今年のサプライズのひとつとして考えています。
自分のYouTubeチャンネルでも言いましたが、アベノミクスなどの大相場では後から買っていっても間に合いますが、最近はガンと落ちたりするので、botが利食って落ちたところを、オシレーターを使ってカウンターで買っていくとか、良いやり方にチューニングしないといけない相場になっています。
リスクオフ環境下の通貨選び
EUDAUD週足

このまま金利が上昇するとリスクオフの相場になりますが、通貨はどのように選択していけばよいのでしょうか?
リスクオフになったらクロス円が売られるんでしょということになりますが、最近はクロス円という概念が難しくなっています。
EUDAUD週足を見ると、今週は陽線が立っています。株が落ちる時にユーロ買い、オーストラリアドル売りになっています。
5、6年前までは、リスクオフだと円が買われて全通貨が売られる、つまりクロス円が売られるという状況でした。資源国通貨は売られるけど、今週もオーストラリアドルが落ちてユーロが上がっている時もあるので、クロス円が落ちてるよねだけで済む時代ではなくなってきています。
昨年の酷い時は、オーストラリアドルは買われてるけど、キウイは売られているという資源国通貨同士で大きく値幅をともなって動く時もありました。
昨年、ゴールドマン・サックスを中心に、オーストラリアドルを売ってカナダドルを買うという取引がすごく流行っていました。12月にはそのリバースが入って、オーストラリアドルはすごい買われるけどカナダドルは暴落しているということもありました。クロス円というひとくくりで考えることが難しい相場になってきています。
AUDJPY週足

1月は「January effects」1月効果というのがあり、税金対策で売ったものをまた1月に買い戻すので、12月から1月にかけて、米株は強くリスクオンになるというのが一般的です。
そのような雰囲気だったので、年末はAUDJPYやAUDUSDを買ったりしていました。しかし、年初に金利が上がったので、今回の1月効果は続かず、昨日は全インデックスが落ちAUDJPYも落ちています。
株が落ちる時は流動性の高い豪ドルが売られることが多いので、豪ドルを選択しています。当面この流れが続くのであれば、豪ドルの上値は重いと考えています。
米国の金利予想

金利先物市場でニュージーランドドルを例にあげると、今年3回、来年も3回の利上げを織り込んでいるのかキウイは全然上がりません。RBNZ(ニュージーランド準備銀行)やBOC(カナダ中銀)などの中央銀行の利上げも金利の市場はほぼ織り込んでいます。
ドル円は今週115円のミドルを超えて、116.35円まで行きました。基本的にはアメリカの金利予想も利上げを全部織り込んでいます。こうした背景から、ドル円が上がるのかはピンと来ていないところがあります。
豪ドル円が下がっている時に、ドル円が上がるということはまず無いので、株が下がって豪ドル円が下がるのであれば、ドル円も下がるかもしくは揉み合いになるかどちらかだと思っています。
金利が1.7%ぐらいで収まって、株が落ち着き、また金利が1.75%ぐらいまで行けばドル円も上がるかもしれませんが、金利がさらに上がってもう一段株が下がるとドル円も上がらないとみています。
ドル円はgamechangeが進んできているので、どちらに振れるか分からないところがありますが、豪ドル円は株が下がると連動して下がるので分かりやすく、選んだ方がよい通貨ペアだと思います。
USDJPY日足

基本的には、ドル金利が上がることによってドル円が上がると思うのですが、ドル金利が上がって株が落ちてくると、両方の圧力がかかるので見通しが難しくなっています。
ドル円日足をデマークチャートでシンプルに見ると、短期的には116.35円、116.50円ぐらいで一旦天井をつけて調整に入るかもしれません。
株が下がると、クロス円の売り圧力でドル円が頭打ちする可能性もあるので要注意と考えています。
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